そうちゃんへ

たまさん(30代・女性)
2017年8月に長男を出産。
想いをつむいだ日: 2021/11/3

そうちゃんへ

そうちゃんはあと少しで5歳。
あっという間に流れていくかけがえのない月日の中で、今のうちに何か残せないかなと思って、手紙を書くことにしたよ。小さいうちは常にそばにいて守ってあげられるけれど、大きくなるにつれて離れる時間もきっと長くなるから。これから大人になっていくそうちゃんの力になるもののひとつとして、この手紙を残します。

暑い夏

そうちゃんが生まれたのは、とても暑い夏。太陽がジリジリと照りつける中、お腹の中のそうちゃんといっしょに、病院まで歩いて通っていました。出産予定日は8月17日。8月7日に陣痛らしきものがあって一度入院し、そうちゃんに会える日が近づいているのを感じていました。

その後8月10日の妊婦健診で「陣痛の間隔が短くなってきている」と言われ、家でお風呂に入っていた夜中に破水。日付を越えてから病院に行きました。そうちゃんの頭が上に向いていて、引っかかってなかなか出てこなくて。お母しゃんが痛みに耐えながら「私は力まない~!!!」と唱えて頑張っていたら、ずっとそばにいてくれたお父しゃんのほうがつらくなってきたみたいで、手を握りながら後ろを向いて泣いていたのを覚えています。

8月11日、朝9時17分。そうちゃんが生まれたその瞬間「わあ~やっと会えたね……! そうちゃんも頑張ったね……!」とうれしくて涙が出ました。そのときの様子を覚えているとそうちゃんは教えてくれたね。「やっとあえたね〜ってお母しゃんないてたよね。ぼくもおなじきもちだったし、やっとお母しゃんのおかおがみれてうれしかったよ〜」って。

この話をしたのはそうちゃんが3歳のときで、「お腹の中にいたときのことって覚えてる?」と聞いたら「うん、おぼえてる」とそうちゃんが答えるから、ほんとうに驚いた。
「はやくおそとにでたいよ〜って、いっつもないてたの。おそとにでてはやく、お母しゃんのおかおをみたかったんだよね。あとね、おなかのなかが、あっつくてあっつくて、はやくでたかったんだよ〜」と話してくれたね。それを聞けてすごくうれしかった!

生まれてきたそうちゃんは、小さくて、あったかくて、なんてかわいいんだろうと感激した。お腹の中にいるときは顔をいつも隠していたから、「ああ、こういう顔していたんだ!」って分かってうれしかったよ。

産後数日でそうちゃんに黄疸が出たから光治療をしたんだけど、点滴をしている姿を見て「ちっちゃい手に針をいっぱい刺されてかわいそう」と、お母しゃんは不安でした。それに、そうちゃんをコット(赤ちゃんのベッド)に寝かせると泣き止まなくて。抱き上げてあやしながら、そうちゃんのために私に何ができるんだろうと、不甲斐なさに悲しくなりました。

でもある日、そうちゃんを抱っこしていると、朝陽が昇ってまぶしい光が差し込んだの。部屋がキラキラと金色に輝いて、すごくきれいで……。「私がしっかり守らなくちゃな」と前向きな気持ちになったよ。あのきれいな朝陽は、ずっと忘れられないと思う。

それから、入院中、母乳をあげたり体重を測ったりするとき、必ずそうちゃんにかけていた言葉があります。「がんばれがんばれ、そうちゃん!」という応援と、「かわいくて、やさしくて、思いやりがあってー」と思いつく限りのポジティブな言葉。今も夜寝る前にこの言葉をかけていて、そうちゃんのほうから「かわいくてー、って言って」と言ってくるよね。最近は「足が速くてーダンスもじょうずでーって言って」と要望も出てきて、ほんとおもしろいね(笑)

そうちゃんの名前

そうちゃんの名前は、「吹き抜ける風のように、爽やかで気持ちのよい人間になってほしい」という想いを込めました。暑い季節だったのと、人との関係に心地よい風を吹かせられるような人になってくれたらうれしいなと思って。名前の響きだけでなく、どのような漢字にするか、お父しゃんがたくさん案を出してくれました。

お父しゃんは、そうちゃんが生まれてくるのを心から楽しみにしていたし、生まれた直後から今日まで毎日写真を撮っています。撮るのを欠かしたことがないと思う。いつまで続けるんだろう? 小学校入学までかな? お母しゃんは気になっています(笑)

それに、3歳くらいまで、そうちゃんはお父しゃんに顔がそっくりだったの。二人で出かけると隣に座っている人が「えっ!?」って二度見するくらい。海外旅行のとき、目の前から歩いてきた人に「パパと同じ顔!」というようなことを英語で話しかけられて、お父しゃんはすごくうれしそうにしていたよ。

私が土曜日に仕事があるときは二人で遊びに行って、そのまま温泉がついているホテルに泊まって帰ってくることも多いね。すごく楽しそう。そうちゃんは「ホテル王になる」と言っているくらいホテルが好きで、いろいろパンフレットを集めては研究しています。理想の客室を再現しようと、家でもいろいろとティッシュケースとかクッションとか持ってきて工夫していて、おもしろい(笑)

ちょっと脱線したけれど、この手紙を読んでいるとき、もしお父しゃんからの言葉が少なくなっていたとしても、お父しゃんはそうちゃんのことを生まれたときからずっと大切に愛しく思っていることを覚えておいてね。

生まれてきてくれてありがとう

あと少しで5歳になる今のそうちゃんは、思いやりがあって、ポジティブに変換していくのがすごくじょうず。私がドジをしてめげていると、「お母しゃん、だいじょうぶだよ! これもいいよね! ど〜んまい!」と明るく励ましてくれるの。

お母しゃんは、完璧な母にはなれないし、ならなくていいかもって思っています。「しょうがない」って許される、可愛げのある母でありたい。そうちゃんといっしょに感じて、いっしょに成長していきたい。「お母さんの言うことだから絶対」ではなくて、同志としてやっていきたい。いざというときにちゃんと話をしてくれるような関係を築いていきたいと思っているよ。

思えば、すでに「しょうがないなあ」って感じで、そうちゃんが引っ張ってくれているね。出かけたときにお母しゃんがすぐに休憩したがることを知っているから、そうちゃんは「お母しゃん、そろそろ休憩でもしよっか」って声をかけてくれるよね。「そろそろコーヒーでも買いにいこっか」って(笑)お洋服を見るときも、試着室で「ああ~プリンセスみたい~すごくかわいいね~! めんこちゃんだね~」って言ってくれる。

なんだか、私がそうちゃんから元気をもらってばっかりです。毎日、何回も、大好きだよって言ってくれて、ありがとう。「そうちゃんは、お母しゃんと結婚したいけど……できないから誰かと結婚するかもしれないけれど、でもお母しゃんとずっといっしょに暮らすからね」って。なんて頼もしいのかしら(笑)「お母しゃんは、もしかしたらお父しゃんのことがいちばん好きかもしれないけれど、そうちゃんのことも同じくらい好きと思ってくれたらうれしいなー」と話すのを聞いて、そう感じて言葉にできるってすごいなと思います。

そうちゃんがそうやって気持ちを伝えてくれるたび、すごくうれしいし、心の底から勇気が湧いてくるの。生まれてきてくれて、私たちのところにきてくれて本当にありがとう。そうちゃんがいてくれて最高に楽しい。

そうちゃんが生まれてきてくれたことで、人生に色が足されてより豊かになったよ。お母しゃんも、もっと学んで、いっぱい成長したいと思うようになった。暮らしにも目を向けられるようになった。日々、そうちゃんの存在のおかげで、生きることがさらにおもしろくなったと心から思っています。

ほんとうに、そうちゃんは、そのままありのままで最高。自分とお母しゃんを信じて、これからもいつでも好きなように興味のあることはやってみて! 何かあってもなくてもいつでも話を聞くし、ずっと味方でいるから大丈夫!

そうちゃん、私たちの元に生まれてきてくれて本当にありがとう。
そうちゃんの親になれたことを誇りに思います。

愛を込めて。
お母しゃんより


この文章は、インタビューの内容をもとに執筆しています。