yoccoさん(30代前半・女性)
2021年5月に長女を出産。
想いをつむいだ日: 2022/11/4
さっちゃんへ
どんなふうに過ごしているかな。一歳のさっちゃんは、おっとり、まったり、おだやかさん。よく笑って、お絵描きが大好きで、くいしんぼうな女の子です。
さっちゃんと一緒に過ごす日々がほんとうに幸せで、可愛くてたまらなくて。こんなに愛しいさっちゃんの様子を残しておきたいと思って、お手紙を書くことにしました。
家族に囲まれて
いまは、ママの実家、お寺の近くに住んでいます。ママ、パパ、おじいちゃんとおばあちゃん、みっちおじさん。さっちゃんは家族に囲まれて育っています。
さっちゃんが生まれたときは、おおきいばあばもいました。さっちゃんが生まれて大喜びで、「あと20年は生きる」と話していたくらいだったんだよ。さっちゃんは毎日お風呂上がりにおおきいばあばのところで少し遊んでから部屋に戻るのが習慣で、おおきいばあばは、それをすごく楽しみにしてくれていました。さっちゃんが一歳になる前に亡くなってしまったのだけど、それもいつものように遊んだ数時間後のことでした。きっと記憶には残らないと思うけれど、おおきいばあばにとても愛されていたことを知ってほしいです。
そもそも、ママが実家に戻ってきたのは、もう一度おおきいばあばと一緒に住みたいと思ったからでした。ママが一歳のとき、おばあちゃんはまだ教員として働いていたから、おおきいばあばが育ててくれていたの。おおきいばあばは、その頃のママとの日々をすごく大切に記憶してくれていました。おおきいばあばは、最初に生まれた女の子がすぐに亡くなってしまったらしいの。そのあと二人男の子(おじいちゃんと、おおおじさんです)が生まれたけれど、おおきいばあばにとっての女の子は、すぐいなくなっちゃったんだよね。だから、ママが生まれたときに「わたしにも女の子ができた」ってうれしかったんだって。そして、さっちゃんが生まれて、またすごく喜んでいたし、ちっちゃいママに再び会えた気持ちにもなるって話していたんだよ。
いま、ママが仕事しているとき、同じように今度は、おばあちゃんがさっちゃんを見てくれています。さっちゃんは、おばあちゃんがすごく大好きなの。今日も、おばあちゃんがおじいちゃんと一緒に旅行に出かけているので、「おばあちゃんがいない」って泣いていたくらい!
たくさんの家族に囲まれて、ママと同じように育っている。いま暮らしている部屋も、ママが小さい頃に住んでいた部屋。いずれ出て行くその日まで、さっちゃんが家族に囲まれてのびのび育ってくれたらいいなと思っています。家族みんな、さっちゃんがきてくれて心から喜んだし、一緒に暮らして毎日すごく幸せなんだよ。
さっちゃんに会えた!
パパと結婚して数年、子宮内膜症で治療をしないと赤ちゃんを授かれないと知ったとき、ママは泣きながら家に帰りました。保育士のパパは、自分の子どもを育てることをずっと楽しみにしていて、パパとママの間に子どもがいない未来なんて考えられませんでした。毎日薬を飲んで、一週間に一度はお休みをもらって病院に通いました。四年間の治療。仕事もやめて何とかその時期を乗り越えたの。
ちょうど治療が終わるころが、キャリアチェンジのタイミングと重なりました。ママは念願のデザインの仕事ができるようになったところで、すぐに子どもを授かってよいのかすごく悩みました。パパと何度も話し合って、「わたしたち夫婦に子どもがいない未来のほうが苦しいね」と、赤ちゃんのほうを優先することに決めたの。
だから、さっちゃんを授かって、ほんとにほんとにうれしかった。
妊娠中はつわりが重くて、病院で点滴を打っていた時期もありました。つわりがおさまってからは嘘のようにラクになって、そこからはさっちゃんが生まれてくるのが楽しみでたまらなかった! お腹の中にいるときから愛おしくて。毎日のようにさっちゃんに話しかけていたし、パパにも「ちょっとなでなでして~」とお腹を撫でてもらっていたよ。
両家のおじいちゃんおばあちゃんにも、アプリを共有して、成長の様子を知ってもらっていました。両家にとって初孫だったのですごく喜んでくれました。とくにパパのほうのおじいちゃんとおばあちゃんは、「たのしみ、たのしみ!」って泣いて喜んでいたよ。「パパとしゅうへいおじさんに会えてよかったけど、女の子を育ててみたかった気持ちもずっとあったんだ」と言って、さっちゃんのお洋服も作ってくれました。
ママは、さっちゃんに会えるのがすごく楽しみな一方で、出産が少し怖い気持ちもありました。いろんな治療で痛い思いをいっぱいしてきたから、もう怖いのはいやだなと思って、遠くの病院に転院して無痛分娩を予約したの。「月曜日に出産しないと麻酔が打てない」と言われていて、誘発剤を打って計画出産する予定でした。ところが、入院予定日の前日くらいからお腹が痛くなってきて、おしるしもあって。慌てて入院の準備をして病院で診てもらったら、「もう触らないでおきましょう。月曜日までもたないかもしれない」って言われて。もたないと、麻酔なしで出産することになっていました。結局、入院した日のうちに破水して、さっちゃんが夜に生まれました。
だから、怖いと思う間もなく「もう生まれてくるの?」って感じだったよ。ほんとうにはやかった! 本陣痛がきているときに夜ごはんを食べていたんだけど、ママの大好物のシュウマイが出たから、全部食べたい~と思って痛みがくる合間に食べたの。助産師さんに「けっこう痛そうだね、つらい生理が5なら、いまいくつくらい?」と聞かれて、「6か7です」「じゃあ大丈夫かな。夜ごはんまだ食べる?」「食べます」という会話をして。食べ終わってナースコールをしたら、確認した助産師さんが「髪の毛出てる!」って言うの! そこから大急ぎで、陣痛室さえも飛ばして、個室から分娩室に移動しました。どうやら、ママはもともと生理が重い人だから痛みに強いらしくて。無痛分娩の必要はないんじゃないかと言われたよ。だから、いろいろ怖がっていたけれど、さっちゃんはするっと生まれてきてくれました。ほんとうにありがとう。
さっちゃんが生まれたとき、いちばんに思ったのは、産声がかわいすぎる! ってこと。「え、こんなにかわいらしい女の子の赤ちゃんの声なの!?」って。なんとかこのかわいい産声を残したいと思ってケータイで動画を撮っていたら、助産師さんがびっくりして「こっちで撮りますよ」と写真を撮ってくれました。
パパも大喜びで会いに駆けつけてくれました。感染が拡大している時期だったから、面会時間を決めて、防御服のようなのを着てね。パパったら、さっちゃんに会えるうれしさのあまり、熱が上がっちゃって! 検温に引っかかってなかなか入れなくて、助産師さんたちにパタパタと仰いでもらったり、クーラーの下で涼んだりして、何度も体温を測ってやっと入ってきたんだよ。さっちゃんの姿を見たパパは、「 さっちゃん〜! パパだよ〜!」とガラス越しに呼びかけながら、喜びに泣いていました。
「さっちゃん」。生まれてくる子は『さつき』にしたいという気持ちが先にあって、5月に生まれたらいいなと思っていたら、ほんとに5月に生まれてきたね。さっちゃんの名前は、生まれる前から……もう、パパと付き合っていたころに決めていました!
「さつき」という響きも好きだったし、名前を言ったときに笑顔になるようにしたいと思っていました。それに、さっちゃんって呼びたかったの。ちっちゃい「つ」を付けて呼べる名前にしたかった。トトロのさつきちゃんが好きだったのもあります。男の子でも女の子でも、さつきがいいって思っていました。
一緒に過ごす日々
さっちゃんは、たくさんたくさん幸せをくれています。さっちゃんがいる人生が楽しくて、幸せで。ああ、ほんとうに幸せだな~と思いながら毎晩眠っているんだよ。
さっちゃんはお絵描きが大好きで、毎日のように、わんわんを描いてほしいって言うの。ママを見て「わんわんわんわん」って。さっちゃんの手を持って「まーる」「みーみ」と言いながら一緒に描いてあげるときもあるし、さっちゃんが自分で「まーる」と言いながら描くこともあって、目鼻口のお顔が描けるようになってきました! ママはやっぱり絵を描くのが好きだから、さっちゃんもこんなに興味を示してくれることがすごくうれしい。一緒にお絵描きする時間はママにとってもとても楽しいです。
最近は、おしゃべりも増えてきました。よく大人の口癖をまねするの。ママのまねで、「えーっと」とか「あれ〜?」とか、怒ったときに「もうーっ」って言ったりとか。おもしろいし、ああこれわたしのまねをしているんだって気づくことも多いよ。
平仮名の「の」も読めるようになったね。遊んでいるときに「の」を見つけて、おばあちゃんが読みかたを教えたんだって。それ以来、見つけると「の~の~」って言います。おいしいものはすべて「にんじん」って言うのもかわいいです。食べたいものを指さして、「にんじんにんじん」って。にんじんじゃなくてもね。自分でじょうずにスプーンを使って食べられるようになってきて、「おいしい、おいしい」ってたくさん教えてくれるから、お料理するママもうれしいです。
あと、さっちゃんは手を繋いで歩くのが大好き。おばあちゃんが、さっちゃんと両手を繋いで「だんだんだんす」と遊んでいたら、手を繋いで歩くことが「だんだん」だと覚えたみたい。朝の5時半頃から、目覚めてすぐにママの手を握って「だんだん」って起こすの。自分でも何歩か歩けるけれど、手を繋いで歩くのが好きなんだよね!
ねんねの前に毎晩「大好き、生まれてきてくれてありがとう」って話してぎゅうってしていたら、最近はさっちゃんの方から自分のほっぺとママのほっぺをくっつけて、ぎゅうってして「だーいっき(大好き)」って言ってくれるようになりました。ママの頭をなでなでしてくれるときもあります。そういうとき、ママ自身が、生まれてきて、さっちゃんに会えてよかったな、っていうあたたかい気持ちでいっぱいになります。
大好きだよ
さっちゃんがきてくれて、ほんとうによかったと心から思います。あのとき、赤ちゃんのほうを優先する選択をしてよかった。暮らしや家族のことを思いながら働けるのは、仕事にとってもすごくよいことだと気づいたよ。もし仕事のほうを優先していたら、もしかしたらまた体を壊していたかもしれないし、赤ちゃんを授かれないからだになっていたかもしれません。さっちゃんは、わたしを守るためにきてくれたんだなって思うの。
子どもを産んで、育てて。まるで大人が子どもに何かを与えるように思われるけれど、そんなことないなあってママは思います。生まれて1年半のさっちゃんには、目に映るものすべてが新鮮でおもしろいから、さっちゃんの目線で一緒にゆったり過ごすと、あぁ生きるって素晴らしいな、世界はこんなに美しいんだ。って気づけて、やわらかな光に包まれているような、いのちが輝くような時間を過ごせます。さっちゃんにたくさんのものをもらっている。母としても、人としても、一緒に成長させてもらっているの。ほんとうに世界で一番かわいくて、愛しくて、大事な存在。さっちゃんは、わたしの生きる上でのスーパーエンジンです。
だから、さっちゃんらしく、自信をもって。好きなことにたくさん挑戦して、自分の道を突き進んでいってほしいなと思っています。
たとえどんなことがあっても、ママはさっちゃんが大好きだし、ぜったいに味方でいるからね。
ママより
※この文章は、インタビューの内容をもとに執筆しています。