りなへ

さやさん(40代・女性)
2022年9月に長女りなさんを出産。
想いをつむいだ日: 2023/1/12

りなへ

元気にしているかな? いま、 0歳3か月のりなは、ママの膝の上に座っています。つい触ってしまうもちもちなほっぺや手足。おしゃべりを始めた声。すべてがかわいくて、愛おしくて。りなが生まれたときのことをいつか伝えたいと思って、手紙を書くことにしました。

生まれてくるのかな?

2022年9月。出産予定日を翌日に控えた夜、リビングでパパと並んでテレビを観ていたら、お腹が痛くなってきました。少し水が出たような感覚もあったから、「生まれてくるのかも!?」とパパと二人でそわそわ。病院に行ってみることになりました。

日付が変わるころに病院に到着して、予定日ちょうどに生まれるのかなとどきどきしながら診察を受けたら、「超順調にいって今日中かな」と言われて拍子抜けしちゃった。
パパは一度帰ることになって、ママとりなで入院。ついに生まれるかもしれないと思っていたから、まだまだだと知らされて先が見えない不安を感じました。ああ、わたし耐えられるかな。本当に生まれてくるのかなって。お腹を撫でながら「がんばろうね」ってりなに声をかけました。触ればここにいる。一緒にいる。りながいるんだと思うと心強かったです。

痛みはそこまで強くなく、我慢できるといえばできるけど寝るにはちょっとつらいくらい。半分うとうとしながら過ごしました。2時、まだ3時……夜はすごく長く感じたなあ。朝になって部屋に来た助産師さんに「まだ生まれないと思いますが、旦那さんに来てもらいます?」と声をかけられて、絶対来てほしいですって答えたよ。到着したパパの顔を見て、すごくホッとしたのを覚えています。

その頃には痛みが強くなってきていて、朝ごはんを食べるのも一苦労でした。起き上がるのがつらくて横になったまま食べました。痛みが引いた隙に、パパにご飯をとってもらいながら一口ずつ。そんなペースだから、食べ終わるのに1時間半くらいかかっちゃった。昼ごはんも夜ごはんも同じように時間をかけて食べて、再びパパは家へ帰りました。

また長い夜を越えて迎えた朝。診察でお医者さんに「あまり長い時間お産が進まない状態でいるのはよくない」と言われて、ドキッとしました。「お昼まで様子を見て、進みがよくなかったら、提携している総合病院に行くことになります」と説明されました。これはちょっとやばいかもしれない。そう思って不安が襲ってきました。

りなタイム

りながお腹にきてくれたのは、ママの仕事が忙しい時期でした。そういえばいつもと違うかも? もしかして? と思い、赤ちゃんがいるかどうかを確認しようと思ったのだけど、妊娠検査薬を買うのも初めて。薬局に行っても見つけられず、ネットで注文しました。それを全部、パパには内緒で。こっそり検査したらあまりにあっさり陽性判定の線が出たので、信じられなくて。もしかして誰でも出るんじゃない? なんて思って、もう一本入っていた検査薬の封を開けてお水をかけて……。検査終了の線だけが浮き出たのを見て、ようやく「ああ、ほんとうに赤ちゃんがいるんだ」と思いました。
すごくすごくうれしくて。でも、一方でちゃんと育つかなと不安にも。絶対に会いたい、逃したくないと、強く思ったんだよ。

赤ちゃんが小さいうちは、健診も月に一度くらいしかないので、そのあいだ、お腹の中のりなの様子を知るすべがなくて。ちゃんと育っているかな? と心配でした。りながお腹の中で動くようになってからは、「動いてる! 元気だ!」とわかって安心したよ。

りなは、ほんとに足が元気で、触ってなくても見てわかるくらい、どーんって蹴ってくるの。初めのうちはわたししか気づかないような動きだったのが、大きくなるにつれて、パパも触ってわかるくらいになりました。特にごはんを食べるとよく動いていたね。「りなも元気になるから、おいしいもの食べに行こう!」ってパパと話していたよ。「栄養にいいから、鰻とか!」って(ただママが食べたかっただけだけど!笑)。

パパは生まれる前からりなに超メロメロで、毎日話しかけていたんだよ。深夜0時頃は「りなタイム」。仕事から帰ったパパがご飯もお風呂も済ませて落ち着く頃に、ちょうど動き出すの。「あっ、今動いた! すごい動いてる、蹴ってる!」「りなタイムだね~」ってパパと話していました。りなに聞こえていたかな?

りなの名前は、生まれる前からほとんど決まっていたんだよ。性別がわかるかもという頃から、りなと呼んでいました。実は、女の子かどうか生まれるまでずっと確定していなかったの。いつも顔を隠すし、足もピチって閉じていて。でもなぜだろう、勝手に女の子だと思っていました。りなという呼び方がすっかり馴染んでしまって、「男の子だったらどうしよう。りおとかにしようか?」なんて話していたんだよ(笑)

そうやって、りなに会える日を楽しみにしていました。パパと一緒に待ってた。だから、出産が目前に迫ったタイミングで、また急に、怖くなりました。「ここまできて、生まれないって可能性もあるの?」と思って。もうその頃には、生まれてほしくてたまらなかったの。りなの顔を見たくて。りなに、会いたくて。

お願いします

お昼になってもお産は進まず、いよいよ総合病院に移ることになりました。総合病院に着くと、次々と説明を受けました。「陣痛促進剤を打ちます」「帝王切開になる場合もあります」「痛み止めが全身麻酔になるかもしれません」――たくさんの同意書にサインをしました。お願いします、お願いします、と祈りながら。

助産師さんが部屋に来て、夕方までにお産が進まなかったら仕切り直してまた明日になると説明されました。夕方まではあと数時間、今日は難しいのかな、明日には会えるのかな、と不安に思いました。

でもね、そこからお産が進んだの! 陣痛促進剤が効いて急に痛みが増しました。本当に痛くて。あ、喋れないってこういうことなんだなと思いました。陣痛の強さを計測するモニターがあるんだけど、パパがそれを見て「え、なんかすごい数値が出てるんだけど」って動揺していました。「夜中もこれくらい痛い瞬間があったよ」と話しながら、ママは、わたしが落ち着かなくちゃなと思いました。

あたりがざわざわしはじめました。 助産師さんたちが「え、ほんとう?」って感じで。後から聞いたら、まさかそんなに早くお産が進むことになるとは誰も予想していなかったみたい。担当の女医さんにも「今日はないと思ってたよ……すごいね! よしこのままいっちゃおう!」って感じで言われました。

分娩台のある部屋に移動して、助産師さんに促されるままに、体勢を変えたり、いろんな椅子に座ってみたりしました。パパもワタワタしていたけれど、その様子もちょっと微笑ましかったなあ。出産は初めてで、それはパパにとっても同じなんだよね。いっしょに頑張ろうっていう気持ちでした。

ママは、深く息をするのに集中しました。りなが苦しくないように。妊娠中に受けた両親教室で、呼吸に集中したらリラックスもできるし、痛みの方にも意識がいかないと聞いていたから。助産師さんの「呼吸うまくできてるよ」という声を頼りに呼吸を繰り返しました。

誕生の瞬間

「いきんで!」と言われて思い切り力を込めたら、「生まれました、出ましたよ!」と声が聞こえたの。一瞬ぽかんとしました。もう1回ぐらいいきむつもりだったから(笑)。りながおぎゃあと泣く声が聞こえました。「あ、生まれたんだ。女の子だ」と思いました。そしたら、すごくほっとして、疲れもどこかにいっちゃった。

りなを胸の上に乗せてもらって、その姿を見ました。
すごい。思ったよりちっちゃい。赤ちゃんってぷくぷくなイメージがあったから、しわしわのお顔や手足を見て、「あれ、なんか細いのかな? 大丈夫なのかな?」と不安になったのを覚えています。だんだんもちもちになってゆくのだと、後で知るんだけどね。髪の毛がふさふさなのを見て、やっぱりわたしの子だなと思ったよ。それから、恐る恐るりなの口を胸に近づけてみたら、初めてなのにしっかり吸ってくれたね。元気だな、大丈夫そうだなってほっとしたし、やっぱり食いしん坊だなと思いました。

パパも、こわごわ抱っこしていたよ。パパの大きな腕に抱かれると余計にりなは小さく見えて、「やっぱりちっちゃいね」とほぼ同時に呟きました。パパ、本当にうれしそうだったなあ。付き添いできるのは、ママが部屋に戻るまでのほんの2時間ほどで、入院中は面会できない決まりだったの。だから、パパはちらちらと時計を気にしながら「ああ帰りたくない~あ~やだやだ」と何度も呟いていたよ。りなは、生まれた瞬間に一度おぎゃあと泣いてから、そこからずっとスヤスヤと眠っていたから。パパと「寝ているのかな?」「こいつは大物だぞ」と話していました。

今日のりなは?

それから退院するまで、りなの写真を毎日パパに送りました。産後、ママの出血が多くて総合病院にしばらくいたのだけど、インターネットがうまく繋がらなかったの。写真や動画をなかなか送れなくて、じれったく感じました。元の産院に移ってからはネット環境も落ち着いて、LINEのビデオ通話で「いま寝てるよ」とか、りなの姿を見せていました。
そうそう、元の産院に移動するとき、少しだけパパに会うことができました。自家用車で移動してもよいと書いてあったから、パパに来てもらったの。5分くらいのわずかな時間だったけれど、パパはりなに会うことができてとってもうれしそうだったよ。

退院後はママの実家に里帰りしていたから、パパには週末にしか会わない日々でした。パパから「今日のりなは?」と必ず催促がきていたよ。「一日一枚以上、必ず送ってきて」って(笑)はじめのうちは寝顔ばかりだったのだけど、途中からは泣いている姿、変顔、いろんな表情を撮って送りました。むにゃむにゃと動く姿がほんとうにかわいかったな。

里帰りで1か月過ごしたあいだ、ひろさんもすごく喜んでくれました。ひろさんと、ママと、りな、女3人でまったり(バタバタ?笑)過ごすことができたの。ひろさんはりなに「大好きだよ」ってたくさんたくさん伝えていました。そんな姿を見て、「ああ、わたしにもこんなふうに接してくれていたんだな」って思いました。それと、ひろさんはね、おばあちゃんって言われるのが嫌だから、この時から「ひろさんって呼ぶんだよ」って吹き込んでたんだよ(笑)自宅に帰るとき、ひろさんが「貴重な1か月だったよ」としみじみ伝えてくれました。ママも、すごく素敵な期間だったなと思っています。

大丈夫だよ

今のりなは、少し首が座ってきた時期。これからどんどん、できることが増えてゆくのかなと思います。成長してゆくりなの姿を穏やかに見守っている時間が、すごく幸せです。
りなは、究極の癒し相手なの。抱っこしているととっても安心して、ふと気づけば時間が経っている。ずっと抱っこしていられるんじゃないかなって思うよ。

これから、いろんな人に会いたいな。りなが生まれてきて、喜んでくれた人がたくさんいるの。わたしのまわりの大切な人たちに、りなを会わせたい。それで、こんなに生まれてくるのを望まれてたのだと、りなにも伝わったらいいなと思います。

りなが生まれてくるまでいろんなことがあって、いろんな人に支えられました。総合病院に転院するとき本当に生まれてくるんだろうかと怖かったし、生まれてからも「急に赤ちゃんの息が止まることがある」なんて記事を読んで不安になったりもしました。

でも、そんなときに、ひろさんが言ってくれたの。「大丈夫だよ」って。「大丈夫だよ、わたしも安産だったからあんたも安産よ」「大丈夫だよ、みんなに守られているから」って。何の根拠がなくても、ひろさんが大丈夫だよっていうなら大丈夫だと思えました。お守りみたいな言葉です。

いつか、りなも何か大切な道を選ぶときや、チャレンジするときが来ると思う。そんなときは、たくさん話をして、一緒に乗り越えていけたらいいなと思います。
そして、思い出してほしい。
大丈夫だよ。ぜったい、大丈夫だよ。みんな味方だから。りなが選んだ道で大丈夫だよ。

りなが後ろを振り返れば、いつだってちゃんとそこにママがいる。帰ってこられる場所はここにある。だからりなは、安心して、元気に飛び出していってね。

りな、大好きだよ。

ママより



この文章は、インタビューの内容をもとに執筆しています。